ソフトバンクGはどれくらい苦しいか?

ソフトバンクグループ(SBG)が苦境に直面している。ビジョンファンドは不振にあえぎ、負債がうず高く積み上がるなか、アームの現金化は叶わなかった。そして昨年から幹部の離職が止まらない。複雑な構造で外部に情報を閉ざす同社は、実際、どのくらい苦しいのか?

ソフトバンクGはどれくらい苦しいか?
2020年2月12日(水)、東京で行われた記者会見で話すソフトバンクグループ株式会社の孫正義会長兼最高経営責任者(CEO)。背後の純資産総額(NAV)は孫が自社の価値を説明するのに好む指標だが、多くのアナリストは孫が示す純負債に加え、マージンローンなどの明示されていない負債を含むことで、ソフトバンクグループの企業価値を評価している。Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

ソフトバンクグループ(SBG)が苦境に直面している。ビジョンファンドは不振にあえぎ、負債がうず高く積み上がるなか、アームの現金化は叶わなかった。そして昨年から幹部の離職が止まらない。複雑な構造で外部に情報を閉ざすテック帝国は、実際、どのくらい苦しいのか?

まず、ビジョンファンドの苦境だ。第1号ファンドの「ビジョンファンド1」は12年から14年の投資手段として2017年にローンチされたが、連結財務報告書によると、投資資金の59.5%は12月31日時点で撤退した投資先やすでに上場した企業で、その投資期間は5年も経っていない。昨年末までに行われた上場のうち、3分の1近くは、テクノロジー株に逆風が吹き始めた2021年第4四半期に行われたものだ。

SBGはテック株の逆噴射によってダメージを受けている。2021年通年でナスダック総合株価指数は昨年58%高騰したが、2022年第1四半期には15%下落した。WSJが引用したS&P Capital IQのデータによると、12月31日時点でビジョンファンド1に組み入れられている22社の株式は、4月6日時点でそれぞれの初値から平均38%近い損失を出している。

今年2月に行われた2021年10−12月期の決算報告にはこれらの損失は織り込まれていない。

2019年に立ち上げられた若い「ビジョンファンド2」は茨の道を進む可能性がある。これまでビジョンファンド2で行った209件の投資のうち、上場はわずか13件である。市場環境の悪化を考えると、2022年は上場が先送りされる年になる可能性が高いように思われる。

WSJが引用したS&P Capital IQのデータによると、これまでに公開されたビジョンファンド2の投資案件は、4月6日の時点でそれぞれの初値から平均51%下落している。

ビジョンファンドの投資先が将来IPOを行う際には公開市場の投資家が消極的になる可能性もあるだろう。中国の配車企業DiDi Global(滴滴出行)、東南アジアのグラブ、インド決済企業Paytmeを運営するOne97 Communicationsなど、最近の上場のパフォーマンスがことごとく低かったことは投資家の記憶に留め置かれている。

投資縮小と不採算部門の整理

最近もSBGが経営環境の悪化によって守勢に回っていることを印象づけるニュースが続いている。

孫は先月、社内で新規投資の縮小を求めたと言われる。フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、孫はここ数カ月の保有株式の価値の大幅な下落に対応するため、最近の会議で経営陣に対して、投資を減速しなければならないという発言をしたようだ。

ソフトバンク、保有株の暴落を受けて投資を縮小へ
ソフトバンクグループの創業者である孫正義は、ハイテク株の下落や中国での規制強化の中で、同社が資金調達を必要としており、投資を減速しなければならないことを経営トップに警告した。

SBGは最近、悪名高い「ナスダックのクジラ」と呼ばれた社内ヘッジファンドを精算したようだ。FTによると、同社は累計60億ドルから70億ドルの損失を出した「SBノーススター」のほぼすべてのポジションを清算。元ドイツ銀行のトレーダーでこの部門を運営していたアクシャイ・ナヘタは、3月末にソフトバンクGを去ったという。

ソフトバンクG、「ナスダックのクジラ」部門の大半を清算
ソフトバンク、「ナスダックのクジラ」取引部門のポートフォリオの大半を清算した。短命に終わった「SBノーススター」は60〜70億ドルの損失を積み上げていた。

幹部の離職が止まらない

昨年から幹部の大量離職が伝えられていたが、その勢いは弱まっていない。最近退職者のリストに新たに加わった大物は、孫の重要な補佐役の一人であるマルセロ・クラウレ最高執行責任者(COO)だ。彼は給与に関する激しい論争の後、1月にソフトバンクを去っている。

ソフトバンクGナンバー2の報酬トラブルが発するシグナル
ソフトバンクG幹部のマルセロ・クラウレが、会社の提示と二桁違う報酬パッケージを要求し波紋を広げている。南米でのベンチャー投資で非凡な実績を作ったクラウレは、会社が窮地に陥る中、SBGからの出口を探っているのだろうか。
ソフトバンクの苦境は増すばかり
【ニューヨーク・タイムズ】利益の急落、株価の低迷、給与問題による主要幹部の退任など、問題は山積している。ソフトバンクは、その自由奔放なやり方を抑制できるのか?

最近、さらに二人の幹部の退任が確定した。孫の側近として長く活躍したロン・フィッシャーはビジョン・ファンドの米国部門の責任者を退任することになった。孫個人の上級顧問には留まる。悲しい記憶となった100億ドル超のWeWorkへの投資に賛成し、投資後は同社取締役に就任して、その戦略や成長計画について経営陣と最も近いところで働いたのはフィッシャーだったと言われる

2017年にソフトバンクに入社した元ゴールドマン・サックスのバンカー、マイケル・ローネンも3月末日でビジョン・ファンドの米国投資のマネージング・パートナーを退任することになった。彼はGetaround、Cruise、Nuroといった交通・物流のスタートアップ企業への賭けを主導していたという。

不透明な負債比率

SBG自体も、見た目以上に負債を抱えている。WSJが引用したブルームバーグ・インテリジェンスのデータによると、同社のLTV(純負債/保有株式)はすでに規定値を超えているという。金利先渡契約を借入金と資産総額から除外し、SBノーススターとビジョンファンド2の偶発債務と純負債を含めると、ソフトバンクのLTVは最近36%を超えていたと同社は分析している。

ソフトバンクはこの比率を「金融市場の平時には25%以下、非常時にも35%を上限に管理する」方針だとしている。ソフトバンクの会計報告によると、12月31日時点の資産価値に対する貸付金の比率は21.6%であった。

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なぜ、このようなLTVの差分が生まれるのか? ソフトバンクが公表するLTVには、一部の負債が含まれておらず、同社をめぐる情報開示はパッチワークに過ぎないと指摘されてきた。

英エコノミストによると、格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、ソフトバンクの負債比率の計算方法には同意できないとしている。これに対し、SBGはS&Pが独自の方法で負債比率を算出していると反論している。格付け会社のムーディーズは、負債を負っている投資先の株を担保に借り入れたり、孫自身が自社株を担保に借り入れていたりする資本構造を「流動的で複雑、透明性が低い」と評している。

ソフトバンクの過酷な真実
世界で最も過激なハイテク投資家集団のソフトバンクは見事な復活を遂げた。しかし、その欠点はまだ残っており、次のストレステストが近いかもしれない。

どこまで、SBGが追い詰められているのかは、一握りの経営陣のみが知りうることだろう。あるいは、腕利きのオブザーバーはすでにことの全容を掴んでいるかもしれない。

これらの山積した問題を一挙に好転させるものがあるとすれば、それはSBGの最も重要な資産であるアリババの株価の動向だ。アリババがかつての輝きを取り戻すのなら、負債比率は改善し、新たな資金調達の必要性が生じても、流動性を手に入れられるだろう。

次の決算報告では、孫正義・最高経営責任者(CEO)がどのような話で、ジャーナリストを煙に巻くかが興味深い。決算説明会に招かれている日本のジャーナリストには、非常に複雑なSBGの財務構造は荷が重いようであり、孫はこの間隙を見事に突いてきた。

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新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

世界が繁栄するためには、船が港に到着しなければならない。マラッカ海峡やパナマ運河のような狭い航路を通過するとき、船舶は最も脆弱になる。そのため、スエズ運河への唯一の南側航路である紅海で最近急増している船舶への攻撃は、世界貿易にとって重大な脅威となっている。イランに支援されたイエメンの過激派フーシ派は、表向きはパレスチナ人を支援するために、35カ国以上につながる船舶に向けて100機以上の無人機やミサイルを発射した。彼らのキャンペーンは、黒海から南シナ海まですでに危険にさらされている航行の自由の原則に対する冒涜である。アメリカとその同盟国は、中東での紛争をエスカレートさせることなく、この問題にしっかりと対処しなければならない。 世界のコンテナ輸送量の20%、海上貿易の10%、海上ガスと石油の8~10%が紅海とスエズルートを通過している。数週間の騒乱の後、世界の5大コンテナ船会社のうち4社が紅海とスエズ航路の航海を停止し、BPは石油の出荷を一時停止した。十分な供給があるため、エネルギー価格への影響は軽微である。しかし、コンテナ会社の株価は、投資家が輸送能力の縮小を予想している

By エコノミスト(英国)
新型ジェットエンジンが超音速飛行を復活させる可能性[英エコノミスト]

新型ジェットエンジンが超音速飛行を復活させる可能性[英エコノミスト]

1960年代以来、世界中のエンジニアが回転デトネーションエンジン(RDE)と呼ばれる新しいタイプのジェット機を研究してきたが、実験段階を超えることはなかった。世界最大のジェットエンジン製造会社のひとつであるジー・エアロスペースは最近、実用版を開発中であると発表した。今年初め、米国の国防高等研究計画局は、同じく大手航空宇宙グループであるRTX傘下のレイセオンに対し、ガンビットと呼ばれるRDEを開発するために2900万ドルの契約を結んだ。 両エンジンはミサイルの推進に使用され、ロケットや既存のジェットエンジンなど、現在の推進システムの航続距離や速度の限界を克服する。しかし、もし両社が実用化に成功すれば、超音速飛行を復活させる可能性も含め、RDEは航空分野でより幅広い役割を果たすことになるかもしれない。 中央フロリダ大学の先端航空宇宙エンジンの専門家であるカリーム・アーメッドは、RDEとは「火を制御された爆発に置き換える」ものだと説明する。専門用語で言えば、ジェットエンジンは酸素と燃料の燃焼に依存しており、これは科学者が消炎と呼ぶ亜音速の反応だからだ。それに比べてデトネーシ

By エコノミスト(英国)
ビッグテックと地政学がインターネットを作り変える[英エコノミスト]

ビッグテックと地政学がインターネットを作り変える[英エコノミスト]

今月初め、イギリス、エストニア、フィンランドの海軍がバルト海で合同演習を行った際、その目的は戦闘技術を磨くことではなかった。その代わり、海底のガスやデータのパイプラインを妨害行為から守るための訓練が行われた。今回の訓練は、10月に同海域の海底ケーブルが破損した事件を受けたものだ。フィンランド大統領のサウリ・ニーニストは、このいたずらの原因とされた中国船が海底にいかりを引きずった事故について、「意図的なのか、それとも極めて稚拙な技術の結果なのか」と疑問を呈した。 海底ケーブルはかつて、インターネットの退屈な配管と見なされていた。現在、アマゾン、グーグル、メタ、マイクロソフトといったデータ経済の巨人たちは、中国と米国の緊張が世界のデジタルインフラを分断する危険性をはらんでいるにもかかわらず、データの流れをよりコントロールすることを主張している。その結果、海底ケーブルは貴重な経済的・戦略的資産へと変貌を遂げようとしている。 海底データパイプは、大陸間インターネットトラフィックのほぼ99%を運んでいる。調査会社TeleGeographyによると、現在550本の海底ケーブルが活動

By エコノミスト(英国)