フィルターバブル×フェイクニュース×認知バイアス Axion Podcast #10

Axionはデジタルメディアのエコノミクスを広告からサブスクに変えることで、一瞬の注意を引きつけることが正当化される「瞬発的な付き合い」から「長期的な付き合い」へとゲームが変わると考えています。

フィルターバブル×フェイクニュース×認知バイアス Axion Podcast #10

Axion Podcastは、テクノロジー業界の最新トレンドを、元DIGIDAY編集者で起業家の吉田と280万会員の写真を扱うベンチャーの事業統括者の平田でディスカッションする対話形式のラジオです。SpotifyGoogle PodcastAnchorでも視聴可能です。

吉田と平田は、アテンション・エコノミー以降の世界観について話し合いました。平田は、広告モデルでもサブスクモデルでもユーザー迎合な部分は変わらないではないか、と考えています。吉田は、サブスクにエコノミクスを変えることで、一瞬の注意を引きつけることさえも正当化される「瞬発的な付き合い」から「長期的な付き合い」へとゲームが変わると考えています。

レコメンデーションエンジンはフィードバックループを引き起こしています。ユーザーが発現した、関心のある兆候に対し「関連性」のあるコンテンツを提示し続けることで、ユーザーの考えを変えてしまう可能性が指摘されています。

レコメンデーションエンジンの中身のアルゴリズムの「目的」の設定が鍵となっており、広告モデルの場合は、それがインプレッション(デジタル広告のスクリーンへの表示回数)やそれに類するものに設定されています。それは、クリックベイト、信憑性の怪しい情報などのような「低品質コンテンツ」をユーザーに押し付ける「加速器」のような役割を果たしています。

サブスクの場合は、この目的をユーザーの体験に設定できるので、人々にあたえる負の影響は少ない。

吉田は、この目的を幸福(Well-Being)に設定するべきではないか、と考えています。「このアプリと5年、10年付き合ったら人生が豊かになっている」というビジョンの設定こそがアクシオンのやり方なのです。具体的には「人類をあらゆる制約から自由にし、その幸福の追求を最適化する」です。

平田は、フィルターバブルのなかで、「押せないコンテンツ」が出てくる、という行動の制約が生じている、ことを指摘しています。Spotifyで自分が普段聞いていないコンテンツに「いいね」を押すと、それが通常時のコンテンツ推薦に影響してしまいます。

平田は、プッシュ通知等をすべてオンにしても、大量の情報を浴びる中で、自分に重要なものを見つけられる、と考えています。

吉田は、フェイクニュースの広がるメカニズムでは、その情報を検証するのではなく引用することが繰り返される中で、コミュニティの中で規定の事実と化すことがある、と指摘しています。インドでみられたWhatsAppにおけるフェイクニュース流布の技法についても言及しました。

吉田は、人間が誤情報に対して脆弱であることを示す例をいくつか挙げました。

自分がもとから持っている考え方に対し、ありもしない記憶をあると考える虚偽記憶をおのずから創造してしまう。→確証バイアスフェイクニュースが我々の脳にとって蜜の味である理由

人間の脳には制約があります。したがって、外部のAIがその人が摂取している情報を監視し、警告することは近い将来、登場しそうな解決策だと考えられています。また、脳とコンピューターをつなぐことも、「もしかしたら」のひとつです。

※訂正:ポッドキャスト中では、フェイクニュースを見せる実験について語っていますが、「被験者は誤情報だと明らかにされていない」と吉田は語っていますが、正しくは「被験者は誤情報だとあとで知らされても、フェイクに騙される」です。

ホストの紹介

吉田拓史 Yoshi (@taxiyoshida)

記者, 編集者, Bizdev, Product Manager, Frontend Engineer. 早稲田大学政治経済学部卒業後, ジャカルタで新聞記者を5年. 米系デジタルマーケティングメディアDIGIDAYの日本版創業編集者を経て, デジタル経済メディアAxion(アクシオン)を創業. プロフィールサイトLinkedInを参照. ■Twitter  ■Blogニュースレター   ■You Tube

Yasuyuki Hirata(@MUTRON)

エレクトロニックミュージックのウィークエンドミュージシャン。平日は280万会員の写真を扱うベンチャーの事業成長が任務。ドイツのレーベルからEPをパブリッシュしたこともある。■Twitter  ■Website

Photo by Jurica Koletić on Unsplash

Read more

コロナは世界の子どもたちにとって大失敗だった[英エコノミスト]

コロナは世界の子どもたちにとって大失敗だった[英エコノミスト]

過去20年間、主に富裕国で構成されるOECDのアナリストたちは、学校の質を比較するために、3年ごとに数十カ国の生徒たちに読解、数学、科学のテストを受けてもらってきた。パンデミックによる混乱が何年も続いた後、1年遅れで2022年に実施された最新の試験で、良いニュースがもたらされるとは誰も予想していなかった。12月5日に発表された結果は、やはり打撃となった。

By エコノミスト(英国)
中国は2024年に経済的苦境を脱するか?[英エコノミスト]

中国は2024年に経済的苦境を脱するか?[英エコノミスト]

2007年から2009年にかけての世界金融危機の後、エコノミストたちは世界経済が二度と同じようにはならないことをすぐに理解した。災難を乗り越えたとはいえ、危機以前の現状ではなく、「新常態」へと回復するだろう。数年後、この言葉は中国の指導者たちにも採用された。彼らはこの言葉を、猛烈な成長、安価な労働力、途方もない貿易黒字からの脱却を表現するために使った。これらの変化は中国経済にとって必要な進化であり、それを受け入れるべきであり、激しく抵抗すべきではないと彼らは主張した。 中国がコロナを封じ込めるための長いキャンペーンを展開し、今年その再開が失望を呼んだ後、このような感情が再び現れている。格付け会社のムーディーズが今週、中国の信用格付けを中期的に引き下げなければならないかもしれないと述べた理由のひとつである。何人かのエコノミストは、中国の手に負えない不動産市場の新常態を宣言している。最近の日米首脳会談を受けて、中国とアメリカの関係に新たな均衡が生まれることを期待する論者もいる。中国社会科学院の蔡昉は9月、中国の人口減少、消費者の高齢化、選り好みする雇用主の混在によってもたら

By エコノミスト(英国)
イーロン・マスクの「X」は広告主のボイコットにめっぽう弱い[英エコノミスト]

イーロン・マスクの「X」は広告主のボイコットにめっぽう弱い[英エコノミスト]

広告業界を軽蔑するイーロン・マスクは、バイラルなスローガンを得意とする。11月29日に開催されたニューヨーク・タイムズのイベントで、世界一の富豪は、昨年彼が買収したソーシャル・ネットワーク、Xがツイッターとして知られていた頃の広告を引き上げる企業についてどう思うかと質問された。「誰かが私を脅迫しようとしているのなら、『勝手にしろ』」と彼は答えた。 彼のアプローチは、億万長者にとっては自然なことかもしれない。しかし、昨年、収益の90%ほどを広告から得ていた企業にとっては大胆なことだ。Xから広告を撤退させた企業には、アップルやディズニーが含まれる。マスクは以前、Xがブランドにとって安全な空間である証拠として、彼らの存在を挙げていた。

By エコノミスト(英国)