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Axionポッドキャストは、テクノロジー業界の最新トレンドを紹介するラジオ。元DIGIDAY編集者で起業家の吉田と、280万会員の写真を扱うベンチャーの事業統括者の平田が話し合います。

今回のポッドキャストはこのニュースレターを元にディスカッションしています。

テンセントの時価総額がFacebookを超す
静かに世界中に張り巡らされた戦略投資ネットワーク

ニュースレターの要点

テンセントの時価総額はフェイスブックを超し、その事実はロープロファイルを心がけてきた同社に対して、グローバル市場における巨大テクノロジー企業の地位を付与した。現状、貿易戦争の影響を受けていないように見えるが、今年冬の米大統領先以降誕生する民主党、共和党のどちらの大統領も、中国に対して手厳しい態度を取る公算は高く、それはテンセントが世界中に張り巡らした戦略的投資のネットワークに対してどのような態度を示すのかは注意をしていく必要があるだろう。

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ポッドキャストの要点

  • テンセントは株主総利回り(TSR)が非常に高い企業である。特に2005〜2009年の間は、平均して106%の年間TSRをマーク。現在も年間TSRは30.5%にまで低下したものの、メディア企業の中では第7位。
  • プレジデント兼エグゼクティブ・ディレクターのマーティン・ラウが同社の投資戦略のキーマン
  • ラウは、2019年の株主向け事業説明会でテンセントが5%以上の株式を保有する企業の時価総額の合計が5,000億ドル(約52.5兆円)を超えていることを示唆
  • 投資するユニコーンの数は10兆円のVCファンドを運営するソフトバンクグループを凌いでいる。
  • 中国政府が注力する「新しいインフラ」への主要なプレイヤーの1社

1. テンセントの株主総利回り

BCGの報告書によると、テンセントは株主総利回り(TSR)が非常に高い企業である。2005年から2009年までは、BCGが定義するメディア価値創造企業の第1位であった。テンセントは当時、現在の10分の1の規模で、平均して106%の年間TSRをマークしていた。テンセントの年間TSRは30.5%にまで低下したものの、メディア企業の中では第7位となっている。

そのパフォーマンスは、中国におけるインターネット経済の到来を予感させるものであり、2010年代の最大のビジネス・メディア・ストーリーの1つである。

2. 巨大な投資ネットワーク

2.1 投資のキーマン

レジデント兼エグゼクティブ・ディレクターのマーティン・ラウが同社の投資戦略のキーマンとされる。

テンセントの2004年の香港証券取引所上場の主幹事だったゴールドマン・サックスから、2005年2月には最高戦略投資責任者としてテンセントに入社し、企業戦略、投資、M&A、IRを担当。2006年にはテンセントのプレジデントに昇格し、テンセントの日常業務を管理。2007年にテンセントの執行役員に任命された。

テンセント入社以前は、ゴールドマン・サックス(アジア)L.L.C.の投資銀行部門のエグゼクティブ・ディレクター、通信・メディア・テクノロジーグループのチーフ・オペレーティング・オフィサーを務めた。

それ以前は、マッキンゼー・アンド・カンパニーに経営コンサルタントとして勤務。また、ニューヨーク証券取引所に上場しているオンラインディスカウント小売業者Vipshop Holdings Limitedの取締役、ニューヨーク証券取引所に上場している中国のオンライン音楽エンターテイメントプラットフォームTencent Music Entertainment Groupの取締役、ニューヨーク証券取引所に上場しているEコマース大手のJD.comの取締役、ニューヨーク証券取引所に上場している中国のオンライン・ツー・オフライン不動産サービスプロバイダーLeju Holdingsの取締役も務めている。他にも、香港証券取引所に上場しているサービスの電子商取引プラットフォーム「Meituan Dianping」の非常勤取締役、香港証券取引所に上場しているインターネットベースのソフトウェア開発・販売・ソフトウェアサービスプロバイダー「Kingsoft Corporation Limited」の非常勤取締役を務めている。

ラウは、ミシガン大学で電気工学の理学士号、スタンフォード大学で電気工学の理学士号、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院でMBAを取得している。

ラウは2016年にフィンランドのモバイルゲームメーカー、スーパーセルの84%を買収する契約を結び、テンセントのゲーム事業をグローバルに拡大した。

2.2 テンセントの巨大なネットワーク

ファイナンシャルタイムズ紙のLouise Lucasの報告によると、テンセントに近いある人物によると、2019年3月時点で、テンセントは700以上の投資を実行し、中国企業はそのうち400社以上に役員の席を持っており、そのうち30~40%は中国国外に投資しているという。

テンセントの投資ターゲットは多くの場合、受容的である。テンセントは10億人以上のユーザーにリーチするチャンスを提供。規模を拡大するためには、特に小売業、eコマースなどの分野では、深圳に拠点を置くアリババか、中国東部のライバルであるアリババのどちらかが必要となる。WeChatのミニプログラムでの大成功によって、4年で時価総額10兆円を達成した拼多多(テンセントが筆頭株主)はその典型例だ。

拼多多が4年で時価総額10兆円を達成した方法
拼多多は1億3,500万人のDAUと中国の電子商取引企業のなかで時価総額2位を4年足らずで達成した。短期間での成功の主要因はソーシャルの特徴を生かしたバイラル性と顧客獲得費用の驚くべき低さ、地方都市のユーザーの囲い込みだ。巧みなゲーミフィケーションとグループ購入へのインセンティブ設計も目を瞠るものがある。
ミニプログラムは中国ECの最重要顧客獲得チャネル
ミニプログラムは、その流動的なユーザー体験と機能により、ユーザーがWeChatを離れることなくモバイルトランザクションを簡単に完了できるようになるため、eコマースにとってますます重要性を増している。2018年には、ミニプログラムの18%がeコマースに特化していた。
ミニプログラム (小程序) の役割と市場規模
2017年1月に開始されたWeChatミニプログラム(小程序)はWeChatのインターフェイス上で即座に実行できる「サブアプリケーション」。2019年にWeChatユーザーはミニプログラムを通じて1150億ドルを費やした。超複合的なモバイルアプリの展開手法であるスーパーアプリ(SuperApp)の重要な構成要素である。
スーパーアプリ WeChatが生んだ機能統合型プラットフォーム戦略
スーパーアプリは、日常生活のあらゆる潜在需要をひとつのアプリで満たしてしまおうという発想を具体化したもの。WeChatでは、従来のメッセージング機能に加え、フードデリバリー、映画鑑賞チケットや航空券の購入、ゲーム、ニュースの配信、書籍の検索、フィットネスデータのトラッキングなどの機能を、他のネイティブアプリをダウンロードすることなく利用できる。

海外では、テンセントはテスラ、ソーシャルメディアアプリのスナップ、フィンランドのモバイルゲームメーカーのスーパーセル、インドのライドシェアアプリのOla、Fortniteの開発元であるエピックゲームズなど、注目度の高い企業に出資している。

ラウは、2019年の株主向け事業説明会でテンセントが5%以上の株式を保有する企業の時価総額の合計が現在5,000億ドル(約52.5兆円)を超えていることを示唆。バーンスタイン・リサーチによると、テンセントのポートフォリオの価値は700億ドルを超えることになり、ソフトバンクのビジョン・ファンドに迫る規模という。

テンセントは少ない元手で大きなネットワークを築いたが、ビジョンファンドは誤ったトレンドに賭けたせいで、元本割れしそうな情勢であることを考えると、両者の間には非常に大きな投資手腕の差が見受けられる。

今年、テンセントは日本のゲーム開発会社2社に資本参加した。昨年は、約86億ドルを投資したフィンランドのゲーム開発会社Supercellの株式を取得。また、「League of Legends」のアメリカのパブリッシャーであるRiot Gamesの株式を100%保有し、過去10年間には、大ヒットゲーム「Fortnite」のオーナーであるEpicを含む、世界で最もホットなゲーム開発者の12社以上に出資してきた。

テスラ、Uber、Snapchat、Spotifyなどの有名企業に出資し、フリップカートやGojek、Sea Group等のインドやその他のアジアのデジタル・パイオニアのために小切手帳を開いている。

テンセントは、中国のゲーム市場330億ドルの半分以上を支配しており、中国が世界をリードするスマートフォンでのゲームの開拓に貢献してきた。同社の現金を受け取る海外のゲーム会社にとっては、テンセントと提携して中国にゲームを持ち込むことが大きな魅力の一つとなっている。

2.3 ユニコーン

『Hurun Global Unicorn List 2019』によると、このリポートが発出された昨年10月時点で、テンセントは46社のユニコーンの投資家だ。テンセントよりも早い段階の多数のスタートアップに投資するセコイアキャピタルの92社とともに、10兆円規模のビジョンファンドで未上場企業に投資したソフトバンクの42社を上回っている。

3. 新しいインフラ投資

李克強首相が政府の負債を発行して、新しいインフラに投資すると発言したことに呼応し、テンセントも500 billion yuan ($70 billion) を投資すると宣言した。7月9日、上海で開催された2020年世界人工知能会議(WAIC)の会期中にホワイトペーパーを出している。内容はこの通り。

  • ユビキタスAI。 テンセント研究所長のSi Xiaoは、新しいインフラ構築において「ユビキタス」に優先順位を置いている。
  • 技術研究の方向性。 a) MLでは、小サンプル学習の効率化&「オフライン強化学習」(探索をせずに固定バッチのデータから学習するRLアルゴリズム)の開発、b) コンピュータビジョンでは、敵対的攻撃に対する防御力強化&AIの悪用を抑制するためのディープフェイク認識・偽造検出技術の開発。
  • ディープシンセシスの章 。この章では、ディープフェイクシンセシスと呼ばれるもののポジティブな応用に圧倒的に焦点を当てている。いわゆるディープフェイクのポジティブな利用だ。/tensento-deipuhueikusuhashi-hayi-nili-tukamosirenai/
  • FEW(食料、エネルギー、環境)のためのAI。 テンセントの農業AIプロジェクトの興味深い詳細と、実際にどのように効率を改善しているのか、ヨーロッパの大学(オランダ)との連携例も含まれている、
  • 制度的セーフガード 。マルチレベルのガバナンスシステムを確立することが重要であると主張しているが、厳しすぎて柔軟性に欠ける早急な規制には注意が必要であるとしている。

参考文献

  1. Simon Bamberger, Hady Farag, Anna Green, Vaishali Rastogi, Steffen Stern, and Neal Zuckerman. "In Media, Subscriptions Matter Most". BCG. FEBRUARY 24, 2020.
  2. Louise Lucas. "How Tencent is going from gaming to investing". Financial Times. March 11, 2019.

Photo by Tencent.