要点

ドアダッシュは世界最大級のフードデリバリー(食品配達)新興企業。2019年の最後のラウンドの評価は130億ドルに達した。マーケットプレイスを採用し急速に成長したが、レストラン、客、配達員の三者のマッチングの困難さに加え、利幅の短さに苦しんでいる。

ドアダッシュの概要

ドアダッシュ(DoorDash)は、スタンフォード大学の学生であるTony Xu、Stanley Tang、Andy Fang、Evan Mooreによって2013年に設立されたサンフランシスコを拠点とするオンデマンドフードデリバリー(食品配達)サービスである。

アクセラレータのY Combinatorの支援を受けた企業であるDoorDashは、物流サービスを利用してレストランからの食品デリバリーをオンデマンドで提供するテクノロジー企業数社のうちの1社である。DoorDashはパロアルトでスタートし、2019年5月時点で4,000以上の都市に拡大し、米国とカナダの34万店舗から選択して提供されている。同社は現在130億ドル以上の価値を持ち、2019年にはGrubhubを抜いて世界最大のサードパーティデリバリーサービスとなっている。

ドアダッシュは、ソフトバンクやSequoia Capitalなどの投資家から累計約20億ドルを調達しており、直近では127億ドルの企業価値となっていたが、暗雲が立ち込めている。Financial Timesによると、ウーバーとドアダッシュは2019年末ごろ、両者の大株主のソフトバンクの仲立ちで合併について議論した。ソフトバンクは合併を検討することを迫ったが、取引は成立しなかった。この取引からはウーバーイーツとドアダッシュの経営状況が好ましくないことが透けて見える。ソフトバンクの他の投資先の中には、コロンビアの新興企業Rappiやシンガポールの配車企業Grabなど、フードデリバリーサービスを提供している企業がいくつかある。

ドアダッシュは2月に新規株式公開のための書類を「秘匿扱い」として提出したことが報じられている。ニューヨーク証券取引所は一貫して利益を上げてきたGrubhubの価値を40億ドルと算定しており、ドアダッシュが127億ドルの企業価値を維持できないとの観測が大勢を占める。

近年の食品配達の唯一の生存者は、中国の美団点評(Meituan Dianping)。美団は中国の3級〜4級都市での利用者を固めることに成功し、アリババが支援するEle.meとの「焼銭戦争」を終えると、食品配達事業を黒字化。現在、美団点評はスーパーアプリ化の最中であり、旅行や映画の予約のような食品配達以外のセグメントが高い利益率をはじき出している。

ドアダッシュの画面。アプリ内で食品宅配の注文と決済を完了できる。Via Doordash

ビジネスモデル

フードデリバリービジネスは2つの陣営に分けることができる。それは、ほぼ利益を上げているベテランと損失を出している新規参入者である。2000年代初頭に設立されたベテランは、アメリカで公開取引されているグラブハブ(Grubhub)、ヨーロッパではジャストイート(Just Eat)とテイクアウェイが主導している。この3社の価値は合計で180億ドルほどである。このグループは日本の「出前館」に近い。

彼らは市場最大のシェアを獲得しており、ピザ屋、寿司屋、中華料理店など、すでに独自のデリバリーサービスを展開しているレストランへのオンラインアクセスを顧客に提供している。飲食店から請求額の一部を受け取るという比較的シンプルなビジネスモデルにより、グラブハブとジャストイートは何年にもわたって利益を上げてきました。テイクアウェイもまた、ホームマーケットであるオランダで利益を上げている。

最近誕生した新規参入者たちは多額の損失を計上している。彼らには、中国のMeituan(美団)やドイツのDelivery Hero、ウーバーイーツ(ウーバーの一部)、Ele.me(中国のアリババが所有)、ロンドンのDeliverooなどの上場企業が含まれています。そして、ドアダッシュはこのグループの筆頭と言うべき存在である。

これらの企業の多くは、マーケットプレイスの形態をとり、レストランだけでなく、配達員のギグワーカーにも取り分を分け与える。しかし、マージンが苦しい。ベンチャーキャピタルが主に出資している彼らは、顧客に補助金を投げつけ、ベテランのライバルを守勢に立たせてきた。マーケットプレイスは規模の経済を達成すれば、黒字化すると信じられていたが、実際には、食品配達のマーケットプレイスには自動化できないプロセスが多数含まれており、費用を圧縮するすべが上手く見つからなかった。また、新規参入者たちの間のマーケティング競争も激化し、ゲームの参加者の収益性を損ねている時期がコロナのパンデミックが始まるまで続いてきた。

ベテラン企業も、新規参入者に対抗するため、広告や配送ネットワークに投資しているが、それには大きなコストがかかっている。グラブハブとジャストイートは収益が低迷し、テイクアウェイは損失を計上することになった。

デリバリービジネスの唯一の魅力は、その潜在的な規模だ。証券会社バーンスタインによると、世界の外食産業のほぼ3分の1が宅配、持ち帰り、ドライブスルーで構成されており、2023年までに1兆ドルの価値を持つ可能性があるという。2018年のデリバリー市場は1610億ドルに達し、オンライン企業が拡大する余地は十分に残されている。

配達員のイメージ画像. Image via Doordash

ドアダッシュなどのビジネスは、20代、30代の若者が一人暮らしや共同住宅に住み、料理をする時間が少なく、料理をする気がないという傾向をサポートしている。フードデリバリーの最大市場である中国では、3分の1の人が、デリバリーの利便性を理由に、キッチンのないアパートを借りる覚悟があると調査に答えている。デリバリーはまた、UberやLyft、中国のDidiなどの配車プラットフォームと並んで、ギグ・エコノミーの時代の流れにもぴったりと合っていた。

ギグエコノミー とマッチング市場の課題

ドアダッシュはギグエコノミーの労働力を利用しており、LyftやUberと同様のリスクに直面している。ドアダッシュは2019年、ドライバーのチップをめぐる論争に巻き込まれたが、この問題は労働者への給与を増やすことで部分的に解決した。司法長官は同社が人件費削減のために顧客のチップをポケットに入れたと主張してドアダッシュを起訴。ドアダッシュはチップの仕方を変更することで解決したが、チップに手を付けようとした主たる理由である収益の確保については課題が残った。

カリフォルニア州では1月、配達を担うギグワーカーを契約社員としての扱うことを明記し、正社員化を促す新法施行した。契約社員、あるいは正社員として扱うことで、人件費が上昇した場合、食品配達業者の損失はさらに拡大することになる。

世界で最も成功した食品配達の美団点評が黒字化を達成した主要因は、米国に比べ、比較的低い費用で、農村部出身のギグワーカーを確保できたことだった。

しかし、配車のように、誰でも食事の配達でお金を稼げるかというと、決してそうではない。実際には、経済性はさらに悪いかもしれず、調整はもっと複雑です。配達業者は調理にかかる時間が異なる料理を扱わなければならないし、レストランは社内の顧客からの注文に対応しなければなりません。何よりも重要なのは、ステークホルダーが乗客とドライバーだけではなく、買い手、レストラン、ライダーの3つ存在することです。

配車の両面市場における二者のマッチングが、市場の厚みを作るためにわざと遅延させるなどのアルゴリズムの進化により、その効率性を高めたが、食品配達のマーケットプレイスにおける三者間のマッチングがもっと難しいことは想像に難くない。しかも、食事には調理されてから配達までに明確な時間の制約が存在する。

配達員のための画面。注文が混雑する地域にはインセンティブが追加されるが、物理的な配達員の移動や流動性は一筋縄ではいかない。

マクドナルドやスターバックスのような最も人気のあるブランドは、何百万人もの顧客へのアクセスと引き換えに、デリバリーの新興企業を圧迫する力を振りかざしている。ウーバーは、ウーバーイーツが大手レストランチェーンのサービス料の値下げを余儀なくされる可能性があることを認めている。

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参考文献

  1. "DoorDash About Page". DoorDash. Retrieved June 20, 2015.
  2. DoorDash (2019-05-24). "Fueling the Last Mile". Medium. Retrieved 2019-10-25.
  3. Andy Newman. DoorDash Changes Tipping Model After Uproar From Customers. New York Times. June 24, 2019.
  4. Candy Cheng. DoorDash Considers Direct Stock Listing Instead of IPO. New York Times. Nov 20, 2019.
  5. Miles Kruppa, James Fontanella-Khan,  Eric Platt,  Arash Massoudi. Uber and DoorDash held merger talks after SoftBank push. Jan 31, 2020.

Image: "Fortune Brainstorm Tech 2017" by Fortune Conferences is licensed under CC BY-NC-ND 2.0