【特集】”デジタル・インディア” 13億デジタル経済が熱狂する産業の大変革
これから10〜20年の間に「デジタルインディア」がどこまで花を咲かせるかとても楽しみだ。13億デジタル経済の熱狂が始まろうとしている。
有名なゴールドマンサックスの報告書が今後50年間で、ブラジル、ロシア、インド、中国(BRICs経済圏)は、世界経済においてはるかに大きな力になる可能性がある、と指摘したのは2003年のことだった。中国はその後世界2位の経済となり、近年はモバイルインターネットと先端技術の研究開発と社会実装という面でも世界のトップランナーに躍り出た。「米中二強」という表現はよく聞くはずだ。ブラジルとロシアはこのままいくと期待外れだったということになりかねない状況だ。どちらも政治がうまくいっていない。
インドはその報告書が出された段階で、4カ国のなかで最も低い1人あたりGDP、生産性、高い貧困率と最も苦しいところに位置していた。16年が経ったいまインドは着実に前進している。GDP成長率は長期的に安定しており、今後数年間で年7%を大きく上回ると予想されている。ゴールドマンサックスは最近の報告書でインドが世界人口の15%を占め、成長率が7〜8%であるインドは、2030年までに2番目に大きい経済になると予測している。同国は貧困レベルの縮小に成功しており、極度の貧困は2015年までの20年間で46%から13.4%に減少している。
さらにインドには追い風が吹いている。BRICs報告書の2003年からいままでの間にインターネットによる広範な範囲の経済の変革が起きていた。それは中国の驚異的なGDP成長を支えていたものであり、その活用による実体経済の拡張にはすでに十分な証拠がそろっている。レガシーな産業や老朽化した規制・慣行に縛られる富裕国とは異なり、インドにはそれを自分で考え最初から組み立てることができる。インドが享受しているのはこのような「後続者利益」なのである。
2014年からのナレンドラ・モディ政権はデジタル経済の可能性に気づいており、非常にドラスティックな政策を実行している。19年5月に彼の基盤であるBJPが選挙を制したため、政策の継続性が見込める状況だ。BJPの唱導する「ヒンドゥーナショナリズム」は少数派の権利の圧迫や政治的緊張等のダウンサイドがあるものの、ヒンドゥー教徒をひとつの票田にまとめ上げる魔法でもあり、継続性のある政策の実行を助けている。
これから10〜20年の間に「デジタルインディア」がどこまで花を咲かせるかとても楽しみだ。13億デジタル経済の熱狂が始まろうとしている。
(1) デジタル経済
インドは、デジタル消費者にとって最大かつ最も急速に成長している市場の1つであり、2018年には5億6,000万のインターネット利用者がおり中国に次いで2番目に多くなっています。
(2) 政府のデジタル化
インディアスタック INDIA STACK:全国民のデジタル化を支える政府基盤API
「インディアスタック(India Stack)」は生体認証プログラム「アードハール(Aadhaar)」とそれに関連する一連のオープンAPI群を指します。インドのデジタル進化で触媒的役割を果たしました。
(3) 12億人の国民IDシステム
Aadhaarは固有の12桁の数字で、インドのすべての居住者に身元を証明するための、信頼性が高く、独自のデジタル検証可能な手段を提供するために作成されました。
(4) 政府が決済基盤を統一
政府主導の独自基盤「UPI」がゲームを変えた インドのモバイル決済
デジタル決済市場は2023年に中国の5分の1の水準に到達する見込み。中国の事例等を研究し、自前の最善策を練ったインド政府の対応が素晴らしい。
(5) モバイルインターネット革命
Reliance Jioによるモバイルインターネット革命の経緯
インドのモバイルインターネット革命の引き金を引いたのが「Reliance Jio」という史上最もアグレッシブだった通信キャリアの存在だった。その創業から3年間の経緯を追ってみよう。
(6) 進撃のスタートアップ
インドの経済は長期的な急成長を遂げる見込みであり、デジタル経済は2025年で1兆ドル規模に到達する見込み。この市場環境の中でインドのスタートアップエコシステムは成長期を迎えている。
(7) eコマース戦争
巨大な潜在性を秘める市場はまだ成長の初期フェイズにある。この市場はゆうに150億ドル以上の投資を飲み込んでいるが、13億人市場はもっと資金を飲み込んでいくだろう。
(8) ローカライズ
SPOTIFYのインド市場ローカライズ 基本戦術化した価格戦略と軽量アプリ
Spotifyは一人あたりGDPに準拠した価格戦略、インドの通信とデバイスにマッチする軽量アプリの投入で、13億市場に定額制を布教しようとしている。