新興メディアのためのサブスクグロース戦略 デジタルメディアの未来 #8

新興メディアは、サブスクで挑む市場のTAMを調査し、製品がグロースのための費用をかけるのに適当かどうかを判断し、さらに継続率のようなアクショナブルメトリクスから継続的に判断するのが定跡である。

新興メディアのためのサブスクグロース戦略  デジタルメディアの未来 #8

要点

  • サブスクで挑もうとしている市場が適切かどうかをTAM等の調査から判断する
  • 製品がグロースのための費用をかけるのに適当かどうか、継続率などから判断。アクショナブルメトリクスを設計することが重要
  • アプリのみ展開、ニュースアプリ配信、最初からハードペイウォールは絶対に避ける

1. 前書き

前回の #7 は、メディア企業がサブスクを導入するときのグロース戦略について、でした。今回は、新興メディア(スタートアップ)がそれをするときには、どうなるか、ということです。読者の方から「新興メディアはどのように初回認知を構築するのか?」「Axion の戦略は?」という鋭い質問をいただきました。この前者の質問を大きく解釈して、このブログでは、「新興メディア(スタートアップ)がサブスクで市場開拓するためのグロース戦略について説明します。今回の内容を踏まえた上で「Axionの戦略は?」は次回以降、詳細に説明します。

2, 勝率、リターン、期待値

まず、サブスクをするかしないか自体を最初に考える必要があります。新興企業を作ることをギャンブルのアナロジーで考えてみましょう。ギャンブルはしばしばいろいろなことのたとえ話に使えます。重要なのはゲームの勝率と配当を掴むことです。

まず、勝率。ここでは、あなたの製品が一定の顧客に受け入れられる可能性、と考えます。

次はリターン。ゲームに勝ったときの「リターン」の範囲を説明するのは市場です。これは市場調査から想定します。想定される市場規模は3つの範囲をもちます(図1)。最も想定しやすいタイトなターゲットマーケットから、営業やマーケティングで到達可能な範囲であるSAM(Sereved Availavle Market)、マーケットの全体の大きなであるTAM(Total addressable market)で3つのレンジを持つことによって、不確実性に対処します。

TAMの1つのアプローチは、競合他社がいなかった場合にどの会社がどのくらいの市場を獲得できるかを推定することです。より包括的な方法としては、特定の製品やサービスが理論的に提供できる市場規模を推定する方法があります。が、ここでは深堀りしません。

図1. 市場の3つのレンジ。これでゲームに勝ったときの「配当」がどのくらいの幅があるのかを推測します。Total Available Market (TAM), Served (or Serviceable) Available Market, and Target Market. Via Wikimedia Commons (Public Domain).

新興企業のプレーするゲームの特徴は、勝率がとても低く、リターンがとても大きいことです。この不確実なゲームをうまくやるために重要なのは、プロダクトマーケットフィット(PMF)という概念です。これは和訳すると「製品市場適合」であり「製品と市場がどれくらい合っているか」を知るための尺度です。新興企業がPMFを改善すると、勝率が上昇し、配当のレンジが絞れるため、「勝率×配当」の期待値が増加し、視界が良好になります。したがって、賭けたときのリターンがより好ましくなる、と想定できるはずです。

賭けの真髄はただひとつです。「勝ちやすく、リターンが大きい」とわかったときに賭けることです。このような大きな報酬は、群衆が誤っているところを突かないと得られないものですが、今回は説明をシンプルにするため、外部要因を排除することにします。

ただし、PMFには「介入 vs 観察」という課題があります。つまり、一定のトラクションを導き出すには、色々手を尽くさないといけないが、それくらい介入をしたら、それがその製品を観察するのに望ましい環境と言えるか、ということです。実際には、スタートアップは常に不確実な競争環境下にあるため、介入をしないと、最小限のトラクションすらも獲得するのが難しい。だから、こればかりは、テストの確実性を薄めてでもある程度、介入し、その足りない情報の中から、重要な情報を抽出して、意思決定するしかありません。

これは、起業家にとって大きなジレンマにつながる印象があります。製品からいい結果を引き出すには、「絶対にこれを成功させてやるぞ」という決意と多量の施策の実行(介入)が必要ですが、このような決意は、起業家の客観的な評価の目(観察)を曇らせます。熱意の余り間違った井戸を掘りつづけるケースは散見されており、それは取り返しのつかない大きな損失につながります。

よく知られる戦術は「リーンスタートアップ」として知られています。ポーカーに例えるなら、小さく賭けて仮説を検証し、それまでオールインに出ない、ということです。明確な高い期待値の兆候を掴むまでは、大きな賭けをしないことです。以下の記事で詳しく書いています。

3. なぜPMFが大事なのか?

PMFをなぜ確かめるかと言うと、それは新興企業が急成長を目指しているからです。事業を拡張しようとして大量のお金を注ぎ込んでいるのに、それがうまく働かないのは悲劇です。なので、PMFで整合性を先に検証した上で、アクセルを踏む。とても当たり前のように聞こえますが、さまざまな情報をもとに、高速で意思決定をしないといけない新興企業においては、これが案外うまくいきません。

多くの新興企業は黒字化していません。手持ち資金がなくなる「速度」である資金燃焼(キャッシュバーン)の状況に目を凝らしましょう。有料購読の開始時は、顧客獲得費用(CAC)が高い傾向があり、「1人のユーザーを獲得するごとに損をする時間帯」が存在します。このときに資金燃焼の速度が高いのならば、その会社はすぐさま死んでしまいます。

財務面では、資本を効率的に価値へと転換できているか、が重要なのです。資本効率です。ただし、資本効率の計測は難しい部分もあります。それはこのAxionというメディアではおなじみの無形資産です。資本がソフトウェアやコンテンツの制作ノウハウ、ブランドなどに転換された時、これらのために費やされた費用はただただ損失として計上され、バランスシートに存在しないこととなります。これらは、一定のラグタイムを経た後、財務の重要なドライバーとして、見えない形でその影響力を振るうのです。

したがって、資本が効率的に将来価値をもたらしうる無形資産に変わるように心がける必要がありますが、これには深い洞察や専門性が必要です。会社に様々な分野の専門家が揃い、無形資産を含んだ自分たちの会社の価値を算定できる体制が必要です。会社の外部の人がそれを算定するときは、それは「戦略的な数値」と考え、自分たちが算定した価値とは別にしておきましょう。

これらの条件が整って初めて、スタートアップは脱出速度(ロケットが地球の重力圏を脱出するための速度)に達します。新興メディアは、ロケットと燃料に不備がないか、慎重に確かめないといけません。

4. PMFから拡張への流れ

#4 でも触れましたが、インターネット製品のグロース(成長)にとって重要なのはリテンション(継続)です。ニューヨーク・タイムズやフィナンシャル・タイムズ、エコノミストのような新聞のデジタル有料版は紙の宅配と同様、とても高い継続率を誇ります。

メディアにはさまざまなジャンルが存在しますが、有料購読と相性がいいものとそうではないものがあります。現状、相性がいいことが確認されたものは、報道、ビジネス、スポーツ、外食です。このカテゴリーへの参入を検討している場合は、類似性のあるビジネスが公式に発表しているメトリクスを参考にして「このような兆候があればお金を賭けるのに足る」を探し出しましょう。

また、成功していないカテゴリーもありますが、成功させるためのメソッドが確立していないだけである可能性もあるため、ニュースレター等で需要を探りながら、リーンスタートアップを進めていけばいいでしょう。

さて、継続率が高ければ、高くなりがちな資本燃焼を一定の範囲に収めることができます。リテンションは神様のようなもので、それが高いということは、PMFが(その時点で)達成されている、ということを意味します。言い換えれば、顧客獲得のフロントエンドと財務というバックエンドが噛み合っている状態になります。

リテンションは神様。「D2C唯一の生存者」であるダラーシェイブクラブとNetflixのユーザーは、契約後2年後でも継続している。ミールキット宅配のブルーエプロンと生鮮食品宅配のヘマフレッシュ(アリババグループ)のユーザーの大半は半年で消え失せる。Saasquatch "A Solution to Blue Apron’s Retention Problem"から抜粋。

もちろん、継続率以外でもPMFへの洞察を深めておく必要があるのは確かです。たとえば、セコイア・キャピタルのデータサイエンスチームのJamie Cuffe, Avanika Narayan, Chandra Narayanan, Hem Wadhar, Jenny Wangによるブログを、東京大学スタートアップ支援FoundXが翻訳した「プロダクトの健全度を測る (Sequoia Capital)」では、主にモバイルアプリの成長ための様々なメトリクスの整理の手法を教えてくれています。

ただし、紹介しておいてなんですが、これは有料購読メディアを評価するためには部分的には役に立ちません。本ブログはアプリのみでのグロースを前提条件としているためです。#4 でも触れたように有料購読メディアの評価は、ウェブに重心があり、ほぼ有料購読者のみがアプリを利用している状況になるでしょう。つまり、アプリから得られるメトリクスが、Seqouiaが指摘する範囲内にとどまるのなら(アプリだけでの展開の製品と同程度になる)好ましいものの、有料購読者がウェブだけを利用してくれているのもそれはそれでいいです。また、有料購読の特徴として、一部のユーザーは余りアクティブではないもの継続をする状況も存在します。

では、どのようなメトリクスを基に意思決定を下せばいいのでしょうか。まず、解約率が低いのなら、大半の問題を解決済みであることを意味します。健全さを失わない程度にマーケティング費用を積み増し、追加の施策を検討しましょう。

それよりももっと前の段階にある場合には、#4 でも触れましたが、滞在時間で測るのがかなり確実性が高いです(筆者注:アナリティクスツールで計測されるウェブサイトにおける「滞在時間」には不確実性があるため、その不確実性を織り込んだ評価の仕方が必要です。それは次回実例を基に説明しましょう)。そのときには、コンテンツを最終的なコンバージョン以降に楽しんでもらうものに限定する事が大事です。それは#4 で、「ルイ・ヴィトン」と「ドン・キホーテ」のたとえ話で説明したので、ぜひリンクからたどってみてください。

少しだけ中級編についてふれると、極めて多様なタッチポイントからもたらされるウェブへの訪問を分析することはかなり難しいのは確かです。さらにサードパーティCookie死のうとしています。この問題の解き方は、サブスクが前提条件にする「サインインと2回目以降の訪問時のログイン」が重要な最初の一歩となります。これでユニークなIDをユーザーに付与できるのです。この解析のためのデータインフラの整備については、ぜひ、エンジニアと話し合ってください。また、このサインインをお願いするタイミングについてもダイナミックペイウォールの仕組みを導入できていれば、著しく改善することができます。

これ以上先に進んで、より詳細にユーザーのことを知り、アクションを取る手段が実際にはたくさんありますが、テクニカルになりすぎると、Axionの読者でも離れてしまう傾向が明確なので、ここではふれません。

話をシンプルにしましょう。

新興メディアがするべきことは、上記のハイエンドのメディアが表現している品質を、専門とするカテゴリーで再現することです。以前の品の悪いインターネットのようにクリックベイトで引っ掛けてきて「いかがだったでしょうか?」は、有料購読モデルの世界では敗着となります。人間の脳は定量的な判断が効かないことで知られていますが、ここでも直感は現実とは遠い場所にあります。有料購読メディアでは、通りすがりの人で作った100万アクティブユーザーよりも5000のロイヤルユーザーのほうが重要なのです。

有料購読メディアは新興メディアのために働く人にとって、極めて新しい世界です。自社の製品と全く親和性のないユーザーを呼び込むことは、著しくコストが低い場合を除いて、あまり好ましくはありません。サイトやアプリへの訪問ではなく、コンバージョンとそれ以降の長い付き合いを重視してください。

5. やってはいけない3つのこと

有料購読メディアが最初にやってはいけないことは3つあります。

  1. モバイルアプリのみの展開
  2. ニュースアプリへの配信
  3. 最初からハードペイウォール

まず、(1) 「モバイルアプリのみの展開」ですが、これはこれまでに触れたとおりで、有料購読メディアのライフサイクルの特徴としては、認知だけでなく見込み顧客生成、育成までの大半がブラウザを使って閲覧するウェブで行われるからです。「アプリのみ展開」は、重要なライフラインを自ら切り落とすことになります(詳しくはこちら)。

顧客が有料購読を決定するまでにおおまかに4つの段階がある。認知(Awareness)見込み顧客生成(Lead Gen)、顧客育成(Nuture)、コンバージョン(Convert)Source: https://www.pinterest.jp/pin/372813675395345898/

同時にアプリはインストールしてもらうためのコストが非常に高いことで知られています。たとえば、一部の広告型のニュースアプリは、テレビ広告でインストールを促し、それをファーストフードのクーポンで受け止め、数日から数週間の利用の後、ユーザーが離れていく、という構造をとっています。その間にアプリ内広告をみてもらい、そのもうけとキャッシュを足し合わせてテレビ広告を買っています。このサイクルは「焼畑農業」と表現できますし、インストールしてもらうための高いコストがボトルネックになっていることを意味します。一度アプリ専業で組み立てたプロダクトをウェブとアプリの同時展開に修正するのも、ビジネス的にかなり難しいでしょう。

次にやってはいけないのが (2) ニュースアプリへの配信です。これは、自分の製品の外にトラフィックを作ってしまうため、いままで説明したようなメトリクスによる製品開発の判断が不可能になりますし、有料購読のために呼び込む顧客を外に逃がしていることを意味します。

ニュースアプリへの配信を実行しないと、初期のトラフィックを獲得するのに苦労するのは確かですが、こつこつ真面目にやっていきましょう。然るべき専門家とともにコンテンツを作り、ソーシャルや検索での地位を上昇させていきましょう。有料購読メディアにとって、デジタル広告を買うことは有力な戦略のひとつです(詳しくはこちら)。

最後にやってはいけないのが (3)「最初からハードペイウォール」です。ハードペイウォールとは、すべてのユーザーがどのようなコンテンツに対しても料金を払わないといけなくするものを指します。

私もコンシューマインターネット製品に疎い人から、ハードペイウォールをおろして、製品を試すように指南されたことが何度もありますが、これは典型的な悪手と考えられます。たとえば、米国には、The Athleticというスポーツニュースアプリがあり、3年半で60万人以上の有料購読者を獲得する成功を収めていますが、彼らもまたこの轍を踏んでいます。The Athleticは、最初からハードペイウォールを課した結果、初年の購読者数はわずか2万人にとどまったのです。そしてその当時の顧客獲得費用(CAC)は非常に高騰していました。

序盤はフリーミアムでマーケティング費用を圧縮しながらユーザーベースを拡大する戦略の方が、より効果的なサブスク転換が可能になるかもしれません。フリーミアムの間に顧客の興味関心や利用習慣などの情報を分析しておく必要がります。そして、それを基にペイウォールを降ろしたあとの戦略を組み立てるのです。

デジタルサブスクリプションビジネスでは、ユーザーが少しずつ一定の要件を満たした後、有料購読を決意する傾向があります。ゼロからペイウォールを設定すると、見込み顧客の生成、育成というマーケティングファネルでのダイナミクスを活用できなくなり、とても不利です。

満たすべき要件としては、ブランド認知、コミュニティ形成、一定のロイヤルカスタマー数、一定のユーザー数、好意的な顧客体験、プラットフォーム上での存在感などが想定されます。これを序盤戦からペイウォールを降ろしたまま実行すると、とんでもない費用がかかるのが常です。このため、フリーミアム展開でこれらの条件が満たせることを確認したいのです。

またハードペイウォール自体が、大いなる機会損失の大本になりえます。ニュースの領域では、ユーザーがニュースソースを選択する際に多くの選択肢を持っているため、購読のためのユーザーの説得(つまりユーザー獲得)は容易ではありません。ペイウォールに到達したら、同じニュースを無料提供する別のニュースサイトを探したり、見出しや本文をGoogle検索に入れてペイウォールを迂回したりした経験があるのではないでしょうか。

また、多くの場合、読者に提示されるペイウォールの回数と購読数には直接的な関係がない、ともされています。つまり、読者に提示するペイウォールの回数を増やしても、必ずしも購読者数が増えるとは限らないのです。そのため、一時期に読まれた記事の総数に基づく従来のペイウォールの仕組み(ハードペイウォールを含む)では、収益を上げるという目的を果たせない可能性がある。従来のペイウォールは、実際には、多くの潜在的な購読者を遠ざけることになるかもしれない。#7で指摘したように、ニューヨーク・タイムズのトラフィックの96%は非購読者(オーディエンス)によるものです。

顧客の状況を細分化しアプローチする手段として「ダイナミックペイウォール」(動的なペイウォール)が存在します。ダイナミックペイウォールをつくるには、顧客のデータを蓄積するための基盤を前提条件としており、データインフラエンジニアやデータサイエンティスト、データアナリスト、機械学習エンジニアのような人が社内で活躍していることも条件になります。これは、日本の新興企業にとってかなり難しい条件のように思えますから(既存メディア企業にとっても)、簡易版としての実装か、日経新聞のような「月10本まで無料」のようなメーター式の採用が好ましいです。

一応、真剣に考えている人のために少しだけテクニカルな部分に触れます(興味のない方はここで読むのをやめるべきです)。


6.ダイナミックペイウォール

ダイナミックペイウォールの作り方の1つとして、ユーザー1人ひとりに評価値を設定し、その評価値に基づいて、ペイウォール戦略を決定する仕組みを構築することが挙げられます。ユーザーが週に数度訪問するようになったり、サインインしたり、ニュースレターを購読し始めたりすると、評価値を足します。これで、ペイウォールを降ろし、料金プランを提示したらユーザーが離脱したとしたら、評価値を下げる、という仕組みをとります。

もっと有力な手段としては、ユーザーがその時に所属する「状態」において、「もらえる報酬が最大になりそうな行動方針はどのようなものか」という観点から、アクションを決定するというモデルに基づいたものがあります。最適なペイウォールのタイミングを見つけることは、ペイウォールを表示するかどうかの決定を、読み取りセッション中の各時点で行うという逐次的な意思決定プロセス(または逐次的な意思決定問題)と考えることで、前進するでしょう。大雑把なたとえ話をすれば、これはアルファ碁が毎回、ページ遷移の途中の間で、読者と囲碁を指しているようなものです。ペイウォールと囲碁の両方とも、ターンの設定されている意思決定ゲームであり、その中で使われている機械学習はともに強化学習という同じ類型のものです。

動的なペイウォールを活用し、デジタル有料購読者を430万人まで拡大したニューヨーク・タイムズ。Photo by Brian McGowan on Unsplash

ダイナミックペイウォールが活用されるようになったのは、ユーザーが誤ったタイミングで記事を読むことをブロックすると、ユーザーの離脱が早すぎたり、潜在的な購読者ではない人が無料で多くのコンテンツを読むことを許してしまう可能性があるという事実に起因しています。ユーザーのインタラクションデータの利用可能性と機械学習技術の進歩がこれを可能にしています。

特定のユーザーがペイウォールの前に、どのくらいの数の記事を読むことを許可すべきかを推定できるでしょうか? すべてのユーザーに対して同じ答えを期待するのは非現実的でしょう。それは、パブリッシャーが利益を最適化するためには、ユーザーによって使い分ける必要があります。

さらに、新興メディアは2つの収益セクターが対立するのを目にするでしょう。たとえば、読者がより多くの記事を読めるようにすることは、広告の表示数を増やすことにつながり、広告ベースの収益を増やすことになります。しかし、サブスクリプションの観点からは、無料コンテンツを提供しすぎると、読者にとってサブスクリプションが不要になるので好ましくありません。多くの場合、多大な収益をもたらす有料購読を優先します。特に日本ではデジタル広告の価格が低いので、この優先の偏りはかなり著しいものになるでしょう。

いかがだったでしょうか?

参照文献

Image by Дмитрий Садовников (CC BY-SA 3.0)

Read more

OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

OpenAIは東京オフィスで、日本での採用、法人セールス、カスタマーサポートなどを順次開始する予定。日本企業向けに最適化されたGPT-4カスタムモデルの提供を見込む。日本での拠点設立は、政官の積極的な姿勢や法体系が寄与した可能性がある。OpenAIは法人顧客の獲得に注力しており、世界各地で大手企業向けにイベントを開催するなど営業活動を強化。

By 吉田拓史
アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表  往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表 往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビは4月10日、日本語のバリアブルフォント「百千鳥」を発表した。レトロ調の手書き風フォントで、太さ(ウェイト)の軸に加えて、字幅(ワイズ)の軸を組み込んだ初の日本語バリアブルフォント。近年のレトロブームを汲み、デザイン現場の様々な要望に応えることが期待されている。

By 吉田拓史